それまで使っていたSONYのミラーレス一眼α7から、今のFUJIFILM X-Pro2へとカメラを買い換えてちょうど1年。大きな変化でしたが、個人的には今でもFUJIFILMに乗り換えて良かったなと感じています。
そしてX-Pro2購入以来、1年間ずっと一緒に使ってきた一番のお気に入りがXF56mm F1.2 Rというレンズ。35mm換算で焦点距離85mmという中望遠レンズです。
この記事ではこのXF56mm F1.2 Rというレンズの魅力や特性について、1年間使ってみて感じたことをまとめたいと思います。X-Pro2と一緒に撮影した作例も多数紹介するので、レンズ選びの参考にしてもらえれば幸いです。
XF56mm F1.2基本仕様
まずはこのレンズのカタログ的なスペックを、下記の表に簡単にまとめました。
詳しいレンズ仕様などは公式サイトを見てもらうとして、ここではサイズや重さ、最大撮影倍率など実際に使う上で気になるポイントのみを抜粋してまとめています。
焦点距離 | 56mm(35mm判換算:85mm相当) |
開放絞り値 | F1.2 |
最小絞り値 | F16 |
最短撮影距離 | 0.7m |
最大撮影倍率 | 0.09倍 |
サイズ | φ73.2mm × 69.7mm |
質量 | 405g(キャップ・フード含まず) |
フィルターサイズ | φ62mm |
メーカー希望小売価格 | 131,000円(税別) |
開放絞り値F1.2という明るい大口径レンズを全長約70cm・重さ405gに詰め込んだ、コンパクトなシステムが魅力であるXシリーズのコンセプトに適ったレンズです。
またメーカーの希望小売価格は131,000円ですが、記事執筆時点での新品の実勢価格は約90,000円ほどです。
ここからは実際に1年間使い込んでみて感じたことを、下記の4つの観点から詳細にご紹介していきます。
- 操作性
- サイズ感
- 表現力・作例
- 機能性
「とりあえずどんな写真が撮れるか作例だけ見たい!」という方は、上のリストから「表現力・作例」の文字をクリックすると作例の項目までジャンプできます。
XF56mm F1.2 Rの外観
まずはレンズそのものの外観や作りについて。XF56mm F1.2 Rは本体外装はもちろんのこと、絞りリングやピントリングといった細部まで金属づくりの高品位な設計。
カメラを構えて握り込むと金属特有のひんやりした質感が指先に伝わり、所有欲を掻き立ててくれます。
XF56mm F1.2 Rの操作性
このレンズに搭載された操作系は絞りリングとピントリングの2つのみ。
絞りリングは「クリクリッ」っと重すぎず絶妙なトルク感で、撮影時に構えながら左親指1本で簡単に回すことができます。
FUJIFILMはレンズによって絞りリングのトルクの重さが結構違うのですが、個人的にはXF56mm F1.2 Rの感覚は好みです。
ピントリングも滑らかながら軽すぎることなく適度な抵抗があり、回すだけで気持ち良さを感じます。Carl ZeissやLeicaのレンズなどに似た滑らかさ。
どちらも使用時には撮影テンポに大きな影響を及ぼす点ですが、きちんとこだわって設計されていることが使っていても伝わってきます。
XF56mm F1.2 Rのサイズ感
F1.2という明るい大口径レンズの部類では比較的コンパクトなサイズ感のXF56mm F1.2 R。
コンパクトな単焦点レンズとのバランスが良いX-Pro2に取り付けても違和感のない大きさ。X-T2やX-H1と一緒に使うとよりそのコンパクトさが強調されると思います。
35mm判換算85mmという焦点距離のレンズは、常に付けっ放しにするというよりも特定の被写体を撮影するために持ち歩く方が多いと思います。
付けっ放しレンズではないからこそ、コンパクトなサイズを活かしてサブの交換レンズとしてバッグに忍ばせやすいというメリットもあります。
XF56mm F1.2 Rの表現力・作例
品質の高さや携帯性もさることながら、やはりこのレンズの特筆すべきはその圧倒的な描写力。
中望遠ならではの圧縮効果と空間をスパッと切り取る画角、そしてF1.2という明るいレンズ性能も相まって繊細かつ立体的な写真が撮影可能。
出てきた画を見る限り、ぼくの目にはフルサイズセンサーで撮影された写真と見分けがつかないほど。
もともとSONY α7を使っていたぼくがFUJIFILMに乗り換えたのも、他ならぬこのレンズが使いたいからというのが大きな理由の1つでした。
ぼくの主な用途であるポートレート・スナップ・物撮りの3つについて、作例をご紹介します。
ポートレート
まずは最も使用頻度が高いポートレート撮影。35mm判換算85mmという中望遠の単焦点レンズは背景から人を浮かび上がらせるように撮影するのにぴったり。
ピント面は髪の1本1本まで細かく解像し、背景はとろけるようにボケる。このメリハリある描写のおかげで、繊細ながふんわりとした女性らしい写真が撮影できます。
少し絞るとさらに解像感が増すので、男性ポートレートの場合は雰囲気に応じて絞りを調整しながら撮影。
ふんわりした笑顔の1枚目はF2.0で、キリッと精悍な顔つきで撮影した2枚目はF4.0まで絞り込みました。
前ボケも嫌味っぽさがなく自然に入るので、写真にさらに立体感を持たせたいときには積極的に使っています。
やりたい構図や表現を自由に作れるのは、レンズの性能があってこそ。XF56mm F1.2 Rはポートレートの表現の幅をグンと広げてくれます。
ちなみにこの写真はXF56mm F1.2 Rを買った翌日くらいに撮影したもの。買ってすぐ、それも室内でなにげなく撮ったショットがこれだったので当時はとても感動したのを覚えています。
スナップ
スナップといえば28mmや35mmなど、広角〜標準画角が多いイメージですが、85mmで撮るスナップ写真も新鮮で楽しいです。
風景を「切り取る」イメージが強くなるので、いかに不要なものを取り除いて主題を作るか、引き算の考えが必要な気がします。
前述の通りレンズが比較的コンパクトなので、スナップ撮影も軽快。85mm縛りのフォトウォークみたいな企画があっても楽しそうですね。
物撮り
最後は主にこのブログで紹介する物の撮影。基本的にはストロボを使わず、レフ板を使って自然光で撮影しています。
最短撮影距離が0.7mと寄れないのがたまに不便ですが、歪まずにまっすぐ正確な物の形状を伝えられる中望遠レンズは物撮りにも役立っています。
物撮りではF4からF5.6あたりまで絞って撮影しています。
プラスチックの質感やシルバーの光沢感など、物の手触りまで伝わってくるような描写力は、洋服など素材感をしっかりと伝えたいぼくにとっては重宝しています。
また被写界深度の浅さを利用して、前ボケを取り入れたテーブルフォトっぽい撮影にもXF56mm F1.2 Rは向いています。
XF56mm F1.2 Rの機能性
次はXF56mm F1.2 Rの機能面に関して、特徴や実際に使っていて感じたことなどを書いてみたいと思います。
手ブレ補正はなし
まずこのレンズには手ブレ補正機能はありません。
85mmともなると手ブレが発生しやすくなってくるので、ぼくは手持ち撮影だとシャッタースピードは1/250くらいが基本。1/125だとかなり注意深くシャッターを切らないとブレが不安になる速度です。
ただそこは明るい大口径レンズ。絞りを大きく開けばある程度シャッタースピードが稼げるので、日中〜夕方までの撮影ならそこまで手ブレ補正は要らないかなというのが1年使ってみた感想です。
もし気になる方はボディ内手ブレ補正機構を搭載したX-H1と一緒に使うのがオススメ。このレンズの価値をさらに引き出すことができる組み合わせです。
F1.2はピント合わせがシビア
F1.4、F1.8始まりの単焦点レンズは多いですが、このレンズはそれよりさらに明るいF1.2始まり。
「F1.2開放で撮ったらどんな幻想的な写真になるだろう…!」と期待するのも無理はないですが、実際に使ってみるとF1.2のピント合せは思った以上に難しいなと感じました。
被写体の目じゃなく鼻にピントが来てしまっていたり、少し体が傾くと右目にピントが合っていても左目はすでにボケてしまっていたり。
ぼくの撮影スキルの問題も多々ありますが丁寧でシビアなピント合わせが必要なので、撮影テンポを重視したい時は少し絞ってF1.4やF1.8を使うことの方が多いです。
寄れないのがたまに不便
先程からも何度か書いていますが、最短撮影距離が0.7mと寄れないのがやはり不便なことがあります。
狭い室内や人混みの中では、どうしても必要なワーキングディスタンスが確保できないという時も多いので注意が必要かと思います。
AF速度は最新式に比べると劣る
XF56mm F1.2 Rが発売されたのは2014年。その後もXマウントシリーズはレンズラインナップを拡充させており、最新式のレンズと比べるとAF速度はやや遅め。
他の最新レンズが「スッ」っと合焦するのに対し、このレンズは「クックッ」とワンテンポ遅れるような感覚です。
ストレスを感じるほどではないですが、速度の速い動体撮影などを検討している方は一度実際に触ってみることをオススメします。
XF56mm F1.2 Rの良い点、気になる点まとめ
ここまでX56mm F1.2 Rの特徴を細かく見てきました。最後にこのレンズの良い点と気になる点を、それぞれ3つずつまとめてみます。
- 息を飲むような描写力の高さ
- 大口径ながら持ち運びも苦じゃないサイズ感
- 高品位な、製品としての完成度の高さ
- 最短撮影距離0.7mと寄れない
- 手ブレ補正機能は非搭載
- AF速度は最新のレンズに比べると劣る
Xマウントユーザーなら持ってて損はないレンズ
以上、カメラをFUJIFILMに乗り換えてから1年間使ってきたXF56mm F1.2 Rに関して、感じたことをまとめてきました。
もちろん誰にとっても完璧なレンズというのは存在しません。ただ少なくともぼくは1年間使ってきて、気になる点はありつつも、気に入っている点がそれらを大きく上回っています。
10万円と決してやすいレンズではないですが、値段を考慮しても買う価値のあるレンズだと強く感じています。
85mmという多少癖のある焦点距離ですが、ここで書いた通りXマウントユーザーなら持っていて損はないレンズですよ。
ちなみにXF56mm F1.2 Rのフィルター径は62mm。高価なレンズなので不意にどこかにぶつけたりしないよう、購入する際はレンズフィルターも忘れずに。
撮影に使用したカメラは「FUJIFILM X-Pro2」
こちらの記事は、今回の撮影に使用したカメラ「FUJIFILM X-Pro2」の紹介です。X-Pro2とXF56mm F1.2 Rを組み合わせると、被写体が背景から浮かび上がるような、ふんわりと優しい雰囲気のポートレートが撮れます。