——iPadはコンテンツ消費デバイスだ
そう言われていたのは昔の話。iPad Proの発売を皮切りに、Apple PencilやSmart Keyboardなどの純正入力デバイスの登場によって、今やiPadはクリエイター向けデバイスの1つとなりました。
かくいうぼくもiPad Proを愛用し、日々仕事や個人の活動に使っている1人。様々なアクセサリや高機能なアプリを使いこなせば、iPad単体でも多くの創作活動をこなすことができます。
【Create with iPad】はiPadを使って創作活動を行う個人にフォーカスし、その活動やiPadの活用法を紹介するインタビュー形式の連載企画。
様々なクリエイターの多彩な活動とそれを支えるiPadの可能性を、連載を通してお伝えできればと思います。
建物正方形レポーター – はなのひかる
はなのひかる
インテリアコーディネーターの仕事をしながら、instagramにて建築物とその歴史を独自の観点で1枚の正方形に表現する「#ひかるの建物正方形レポート」を発信。
Twitterでも「#iPad芸人」というハッシュタグでiPadを駆使した表現活動を行う。趣味は建築物を見ることで、7年かけて撮影した建築物の写真は10,000枚を超える。
instagram:hikarudon12
Twitter:@hikarudon12
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Create with iPad Vol.1はinstagramにて建築物の魅力を独自の世界観で1枚の正方形の中に表現する、はなのひかるさんをインタビュー。
自身で“建物正方形レポート”と称するその活動は、建物の特徴・美観・歴史などをコラージュして1枚の正方形の中にぎゅっと詰め込んで表現したもの。
写真は全て自分で撮影したものを使用し、文字は手書き。額縁やリボンなどの素材も自身で1つ1つ収集したものを雰囲気に応じて選び配置しているのだとか。
7年ほどかけて撮影しHDDに保管した建築物の写真は10,000枚を超えるのだというから驚きです。
また建物正方形レポートは単に画像を作るだけではありません。投稿に添えられたキャプションにはその建物の歴史的な背景から見どころ、ひかるさんの感想まで熱の込もった文章が綴られています。
例えば看板建築という建物のレポートに書かれたキャプションは下記の通り。
鮮やかな印象の投稿画像と打って変わり、テキスト部分は常体を基本とした硬派な文章で構成される、まさにレポート。
一目見ただけでひかるさんの並々ならぬ熱量が伝わってきます。
全体のテイストも建築物の特徴に合わせるようデザインされていて、1つ1つから確かな世界観と歴史の奥深さが感じられます。
そんなひかるさんの創作活動を支えるのは10.5インチiPad Pro。
iPadで建物正方形レポートが作られるまでの作業フローや、一緒に使っている周辺機器やデバイス環境、iPadを使う理由などを聞いてみました。
「この写真たちを世に出してあげたかったんです」
――初めて建物正方形レポートを見た時は驚きました。「なにこれめっちゃ細かい…!」って(笑) 今の活動はいつから、どういうきっかけで始められたんですか?
もともと建物を巡ったり鑑賞するのが好きで、建物を見るたびにパシャパシャ写真を撮っていたんです。でもそんなことを数年続けているうちにどんどん写真が溜まり、気づけばHDDが写真でパンパンに…!
思い入れのある写真ばかりなのでこのまま眠らせておくのは惜しくて。この写真たちをなんとか世に出してあげられないかなと思ったのが今の活動を始めたきっかけです。
あと昔から絵を描くのが好きで、特に細かいものを没頭して描くのが好きなんです。建物が好きになったのも絵がきっかけ。建物の細かい構造を描くのが好きで、そこから実物も見に行ってみようとなり徐々にハマっていきました。
そんな建物好きと細かい絵が好きというのが重なって、今のような建物正方形レポートを始めたんです。それが1年前くらいかな。
実は一番時間がかかるのが下調べ
――建物正方形レポートはiPadを使って作られているということですが、具体的にどういう風な作業で制作しているんですか?
まずは写真の選定をします。過去に撮影した大量の写真から、作品に使うものを選んでいきます。1つの建物につき100枚くらい写真を撮っているので、その中から15枚くらいまで絞り込みます。選んだ写真はGoogle フォトにまとめて管理。
選んだ写真はSnapseedという写真編集アプリを使って露出や色味を調整します。SnapseedはGoogleが提供するアプリなので、Google フォト内から直接編集できるのが便利です。
次は写真の切り抜き。HD背景透明というアプリを使って余分な背景を削除していきます。
素材の準備ができたらキャンバス上に並べてアウトライン作り。全体のバランスを見ながら何をどこに配置するかをあれこれ試しながら作っています。使っているアプリはMicrosoft PowerPointかProcreate。シンプルな作品の時はサクサク使いやすいPowerPointで、ちょっと複雑なものはProcreateと使い分けています。
全体の構成ができたら次は建物の歴史や情報の下調べ。実はこの工程が最も時間がかかっていて、多い時だと1時間以上は情報収集・整理をしています。やっぱり発信する以上は間違いがないよう、正確な情報を掲載することを心がけています。
情報をまとめたら最後にApple Pencilを使って文字や装飾の書き込みを行なっていきます。色合いはもちろんのこと手書き文字も字体を変えて、建物の雰囲気に合うように意識しています。全体のバランスを微調整して、キャプションのテキストを書いたら完成です。
実際に訪れたのは何年も前でも、写真を見たりイラストを書いているうちに当時に記憶が蘇ってくるから不思議です。
1つの投稿作品を作るのにかかる平均時間と内訳は、だいたい下記の通りとのこと。
- 写真選定:20分
- 画像編集:30分
- 写真の切り抜き:30分
- アウトライン作成:30分
- 情報の下調べ:60分
- Apple Pencilで書き込み:30分
- 合計:3時間20分
紙に書くようなイラスト体験がiPadの強み
――作業を細かく聞くと高性能なアプリから無料の簡易的なアプリまで幅広く使いこなしている印象です。iPadはどのモデルを使っていますか?
私は10.5インチiPad Proの256GB WiFiモデルを使っています。Apple Pencilを使いたかったので当時はProモデル一択で、バッグに入れて持ち運びやすい10.5インチサイズを選びました。
普段は周辺機器はLogicoolのキーボード一体型カバーに入れて持ち運び、キーボードが不要な時は軽いケース(写真上)に入れ替えています。
あとはApple Pencilと充電器類と一緒に、クッション付きの収納ケース(写真左)に入れて一式を持ち歩いています。
――iPadを含め普段使っているデバイスを教えてください。
- iPhone X
- 10.5インチiPad Pro
- MacBook Pro
- Windows PC
持っているデバイスは全部合わせるとこの4つですが、MacBook ProとWindowsはもうほとんど使っていないです。
ちょっとしたやりとりや移動中はiPhone Xを使い、個人の活動で使うのはほとんどiPad Proだけ。他にもKindleで本を読んだりNetflixで動画を観るのにもiPadを使っています。
――今はiPadをフル活用しているひかるさんですが、そもそもiPadを買ったきっかけは何でしたか?
昔から絵を描くのが好きだったので、デジタルでも絵を描いてみたいと思ったのがきっかけですね。
あとは本業の方でもインテリアコーディネーターとして電子カタログを使ってお客さんとお話をすることも多く。その両方を満たせるのはiPadかなと思って選びました。もともとiPhoneやMacを使っていたことも要因ですね。
――具体的にiPadのどういう点が気に入っていますか?
イラストレーションに関しては、アナログで紙に書き込むのと同じような感覚が味わえることですね。昔ペンタブを使ってみたこともあったのですが、パソコンの画面を見ながら手元で作業するというのが慣れなくて。
iPadなら手元を見ながらそのまま書き込めるのが紙とペンの感覚に近くて。Procreateなど色んなことができるアプリが充実しているのも良いですね。
iPhoneを使っている人なら画面や操作性に慣れているので、余計なことを覚える必要なくすぐに作りたいものに集中できるのも大きなポイントかもしれません。
正方形の表現を軸に活動の幅を広げたい
――今後の活動について展望などはありますか?
まずは建物正方形レポートをもっと頑張りたいと思っています。1年前にただの趣味で始めた活動ですが、最近では楽しみにしてくれている人も少しずつ増えてきたのが嬉しいです。
最近ではありがたいことに建物正方形レポートを見て、イベントの体験レポートのお仕事をいただけるようになりました。
建物はもちろんですが「正方形の中にモノ・コトの魅力をぎゅっと詰め込む」という表現手法をほかの領域でも実践していきたいです。
他にも制作風景を動画で発信したり、ZINEを作ったり。今の活動を中心としてやりたいことはたくさん。
――日本の古い建築というテーマからしても、これ、英語化したらとても良さそうじゃないですか?
それもいいですね!アルファベットをお洒落な字体で書けるよう、練習します!笑
クリエイター:はなのひかる
instagram:hikarudon12
Twitter:@hikarudon12
note:https://note.mu/hikarusan