フィルムカメラの楽しさに気づき、もっとフィルムで写真を撮りたいと思い購入したLeica M6 TTL。購入してから2ヶ月の間に撮影したネガは、気付けば30本以上。
M型ライカを使うのは初めてのぼくは、大してLeicaというブランドやその歴史について詳しいわけではありません。それでも逞しくもあり繊細で、使うほどに引き込まれる魅力はこれまで他のカメラに感じたことのない感覚でした。
フィルムカメラ市場ではまだまだ人気の高いLeica M6。この記事ではLeica M6 TTLを使ってみて感じた魅力や、使い勝手などをレビューします。最後はLeica M6 TTLで撮影した作例も多数掲載しています。
98年発売のフィルムカメラ Leica M6 TTL
ぼくが購入したLeica M6 TTLは1998年から2003年にかけて発売されたフィルムカメラ。1984年から1999年に発売されたLeica M6をベースに、ストロボ撮影時にTTL自動調光ができるようになったモデル。
細部に違いはあるものの、基本的な作りはLeica M6と同様。約25年前に最新モデルとして発売されたカメラということになります。
20年以上前に設計・製造されたカメラが今も動くというのは今の家電事情から考えると驚くべきことですが、Leica M6は露出計以外の機構は全て機械式。内臓露出計を使わなければ電力なしで写真が撮れてしまいます。
本体はM型ライカらしいカメラ然とした作り。デジタルに移行した現行のLeica M10などにも通づるデザインです。数十年経っても色褪せないそのデザインは間違いなくLeicaの魅力の1つ。ぼく自身、その格好良いデザインに惹かれたというのも購入の大きな動機になりました。
ぼくがLeica M6 TTLを選んだ理由
「Leica M6 + Elmar-M 50mm F2.8 2ndを購入しました。」という記事でも軽く触れましたが、数あるフィルムライカの中からぼくがM6 TTLを選んだ理由は大きく「内臓露出計」と「機械式シャッター」の2点。
実用的な露出計
ずっとデジタル、それもミラーレス機を使ってきたぼくにとって、露出を感覚で合わせるのは難しいこと。別で露出計を使う方法もありますが、できればカメラに露出計が搭載されていることが理想でした。
フィルムライカで露出計が入っているのはM5,M6,M7の3モデル。M5はデザイン的に好みではなかったことと、露出計の受光素子の機構が古く故障リスクが高いと聞いて選択肢から外れました。
長く安心して使える機械式シャター
M6とM7で迷った際に決め手となったのはM6の機械式シャッター。M7の電子式シャッター機構は便利な半面、修理の不安があると聞き、少しでも長く安心して使える可能性の高い機械式シャッターのM6を選びました。
また純粋に機械だけでカメラが動くという点にロマンを感じたことも、最終的にM6を選んだ理由の1つです。
そうやって最終的にLeica M6を買うことを決め探していたところ、ちょうど状態の良いM6 TTLを見つけて購入に至りました。
ライカのフィルムカメラ Leica M6 TTLレビュー
ここからは実際にLeica M6 TTLを使ってみて感じた使用感をレビュー。使うほどに馴染み、ますます好きになる。Leica M6 TTLはそんなカメラだと思います。
手に馴染む筐体デザイン
亜鉛合金のLeica M6 TTLのボディは、ずっしりと重厚感を感じる重さ。グリップはないですが適度な厚みがあり、見た目以上に握りやすいと感じます。
前面の赤いLeicaロゴは不要という声も聞きますが、黒いボディにコントラストが効いていてぼくは好き。
レンジファインダー機はレンズを小型にできるメリットがあるので、街歩きで首から下げていてもおしゃれに見えるので持ち出しやすいです。
明るくクリアなファインダー
Leica M6のファインダーは非常に明るく鮮明。日差しの強い日中も暗い夜でもくっきり見える二重像のおかげで、初めてのレンジファインダー機ですがピント合わせは思ったよりも楽にできました。
Leica M6は0.58倍、0.72倍、0.85倍の3種類のファインダー倍率のモデルが存在。倍率が低いほどファインダー内が広角寄りに、高いほど望遠寄りになります。
ぼくは中望遠レンズを使うことも視野に入れて、0.85倍モデルを購入。選ぶモデルによってファインダー内に表示されるブライトフレームに違いがあるので、自分が使いたいレンズによって選ぶのをオススメします。
- 0.58倍:28mm / 35mm / 50mm / 75mm / 90mm
- 0.72倍:28mm / 35mm / 50mm / 75mm / 90mm / 135mm
- 0.85倍:35mm / 50mm / 75mm / 90mm / 135mm
正確な露出計
Leica M6に内臓された露出計。中央スポット測光なので癖はありますが測光精度は正確で十分実用的。
フィルムを巻き上げてシャッターを半押しすると、ファインダー下部に露出状況に合わせた3つのライトが点灯。左の▶︎が点灯している場合は露出アンダー、中央の●は適正露出、右の◀︎はオーバーを意味しています。
露出の細かさは0.5段分で、例えば▶︎単体が点灯している場合は1段以上のアンダー、▶︎●の両方が点灯している場合は0.5段分のアンダーになります。
文章にすると難しそうに見えますが、ネガフィルムは元々ラティチュード(デジタルでいうダイナミックレンジ)が広いこともあり、割とざっくりな露出でも現像である程度は持ち直せる印象。
シンプルで直感的な操作性
Leica M6は撮影する際の操作部が少なく、シンプルで直感的に扱うことができます。
フィルムを装填してISOダイヤルを1度設定してしまえば、あとは操作するのはシャッタースピードダイヤル、絞りリング、フォーカスリング、シャッターの4つのみ。
さらに先ほど説明した露出計の▶︎や◀︎は、シャッタースピードダイヤルと絞りリングの回転方向に連動。
例えば露出計で◀︎(露出オーバー)が表示された場合、シャッタースピードリングを左に回せばシャッタースピードが早くなり、絞りリングを左に回せばF値が大きくなります。
難しいことは考えずに、ただ露出計に表示された方向にダイヤルかリングを回していけば露出が合うという直感的な操作性が気に入っています。おかげで被写体をじっくりと探したり、構図を決めることに集中することができます。
※Leica M6以前までは、シャッタースピードダイヤルの刻印がTTLと反対周りになっています。上で説明した露出計の方向とシャッタースピードダイヤルが連動しているのはM6 TTL以降のモデルのみです。
シャッタースピード上限は1/1000
フィルムのM型ライカのシャッタスピードは最速1/1000が上限。普段からデジタルで1/8000くらいで撮影慣れしているぼくには、これがなかなか難しいと感じてしまいました。
1本撮り終えるまではISOの変更もできないフィルムカメラ。例えばISO400くらいのフィルムを入れると、明るい日中屋外の場合シャッター1/1000だとF11くらいまで絞り込まないと撮影できません。
「ちょっと背景をぼかしたいな」という時など、最速1/4000くらいでシャッターが切れればなぁと思うことがよくあります。(Nikonのフラッグシップ機などは1/4000切れる機種もある。)
ここはもう割り切って装填するフィルムをよく吟味したり、開放F値の小さいレンズを使って低感度ISOを活用するなどで慣れるしかないなと思います。
撮影に高揚感をもたらす巻き上げレバー
フィルムカメラに特有かつ、1枚撮影するごとに発生するのがフィルムの巻き上げ作業。特に手動巻きのカメラの場合はこの巻き上げ動作を愛せるかどうかが、そのカメラで写真を撮りたくなるかに大きく関わってきます。
Leica M6 TTLの巻き上げは「スチャッ」という、適度な重さと滑らかさが絶妙な感覚。この巻き上げ感が気持ちよく、撮影に程よいテンポと高揚感をもたらしてくれます。
巻き上げレバーが2段階に動く中折れ式レバーも、コンパクトかつ巻き上げしやすく気に入っています。
フィルム装填は慣れが必要
ぼくはLeica M6 TTL以外にもう一台PENTAXのフィルム一眼を使っていますが、Leicaのフィルム装填はちょっと慣れが必要。
フィルムはこのように底板を外して背面を開いて装填。パーフォレーションを歯車に確実に引っ掛けて巻き上げできているか確認します。
慣れないうちはフィルムを引き出しすぎて、1枚目がこんな風に感光してしまうことがほとんどでした。コツとしては装填後に巻き上げ確認を行ったあとに、引き出しすぎているフィルムを巻き戻しクランクで軽く巻き戻すこと。
もっとも1度コツを掴んでしまえばあとはそんなに難しいことではありません。この辺はまた動画を撮って別途記事でも書いてみようと思います。
Leica M6 TTLで撮影した作例
ここからはLeica M6 TTLで撮影した写真の中から、自分が気に入っている写真をいくつか作例として紹介。
レンズはElmar-M 50mm F2.8 2ndとSummicron-M 90mm F2 3rdの2本を使っているので、レンズ別にまとめました。
Elmar-M 50mm F2.8 2ndで撮影した作例
Leica M6 TTLの最初の1本に選んだレンズがElmar-M 50mm F2.8 2nd。沈胴式でコンパクトなレンズなので、持ち運びがしやすく主にスナップなど街撮りで使っています。
Summicron-M 90mm F2 3rdで撮影した作例
Summicron-M 90mm F2 3rdはずっしりと重さのある中望遠レンズ。開放からキリッとシャープな写りで、被写体を印象的に切り取りたいときに重宝します。
90mmになるとファインダーのブライトフレームがかなり小さくなってしまうので、一緒に1.25倍のマグニファイヤーも購入。この辺は別途レンズレビューでもご紹介します。
写欲に応え、写欲を高めてくれるカメラ
価格の高さも手伝いなんとなく近づきがたいイメージがあるLeica。でも実際にライカを使ってみると人を突き放すような孤高のブランドというよりも、使い手に寄り添ってくれる懐の深さや人間らしさを感じます。Leica M6 TTLを使って、ぼくはそう感じました。
記事を書くために色々と調べていると、Leica M6は歴代M型ライカに比べると操作感が劣ると言われているようです。たしかに友人が使っていたM3の操作感も素晴らしかったですが、無理に比較したりしなければM6も使っていて十分気持ちの良いカメラです。
そして上質な操作フィーリングだけでなく、シンプルな操作性や実用的な露出計など、M6 TTLには写真を撮るというカメラ本来の役割をより便利にしてくれる性能が備わっています。
使う人の写欲に応え、写欲をさらに高めてくれる。Leica M6 TTLと、これからももっとたくさんの写真を撮りたいと思います。