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当ブログを運営するFukulow(@yuta_black)です。
ファッション好きなら毎季楽しみにしているのが各ブランドの新作コレクション。
ぼくも好きなブランドのランウェイや展示を見て、来シーズンへの期待を膨らませています。
しかしこうした従来までのコレクションの仕組みについて疑問を抱き、コレクションスケジュールを変更する動きが出てきました。
これまでのコレクションの仕組み
今回話題になっているのが、従来までのコレクションのスケジュール感です。
ご存知の通りファッション業界の基本は先取り。今のような真冬の時期でも既に店頭には次の春夏シーズンの服が並んでいます。
ブランドの新作コレクションはさらにその傾向が強く、2月の今の時期には来年の秋冬のコレクションを行っています。
つまり1年後に店頭に並ぶ洋服はもうすでに発表されているということ。
上図の通り従来までのコレクションでは消費者がコレクションを見ても、その商品を購入できるのは半年〜1年後という状況でした。
すでに2ブランドが即売型への以降を決定
長らく続いてきた現在のコレクションスケジュールですが、ここにきて複数のブランドがそのスケジュールからの脱却を宣言しています。
その複数のブランドというのがバーバリーとトム・フォード。
「バーバリー」が従来通りのランウエイショーを中止。9月からは「すぐ買える」メンズ&ウィメンズ・コレクションを同時発表
従来のショーは時代遅れ?トム・フォードがコレクションスケジュールを変更
どちらも伝統的なビッグメゾンながら、先進的で形式にとらわれないコレクションを発表している2ブランド。
バーバリーはコレクションを公式LINEアカウントで生中継するなど、デジタル化にも力を入れています。
具体的には本来2月頃に発表されるはずである、2017年秋冬コレクションを9月に後ろ倒します。
これによりコレクションで発表した新作を消費者がすぐに購入・着用できるようになります。
これまでの展示会という性質のコレクションから、即売会に近いようなコレクションへとシフトしていくことに。
現代の商環境にマッチした形式へ
上記2ブランドに端を発するコレクションスケジュールの変更は、今後大きな流れになる可能性があります。
そもそもコレクションから販売までの期間が取られているのは、流通やマーケティングの観点で都合がよかったという理由がありました。
ブランドがコレクションを発表すると、発表を基に各販売店がバイイングをし、世界中の店舗へと届け、プレスを行って雑誌等に掲載させるという時間が必要です。
コレクション発表から消費者の手に届くまでに必要な時間を、半年の間に確保していたのです。
しかし現代ではこうした状況は一部変化してしまっています。
前述したバーバリーのLINE活用の事例のように、コレクション自体がインターネットを通じて動画・静止画で全世界同時で配信することが可能になるとプレスの重要性は低下します。
さらにブランドが自前で全世界へ配送できる公式オンラインストアを持つケースも多くなり、必ずしも流通事情を1番に考える必要がなくなりました。
消費者もインターネット通販や当日配送など、今すぐ欲しいという要望をより強く持つようになってきています。
こうした状況において、発表された製品がすぐに買えるという即売型のコレクションはまさに現代の商環境にマッチした動きと言えるかもしれません。
実際に昨年より、米国ファッション評議会(CFDA)も消費者重視を目的に、コレクションの全体的なスケジュール変更を検討しているとのことです。
予想される影響
ここからはこうした即売型の新しいコレクションの普及により予想される影響を、管理人が個人的に妄想してみようと思います。
ファストファッションの弱体化?
まず、これは避けられない動きになるかと思います。
ファストファッションはその名の通り、「企画→製作→(発表)→流通→販売」のサイクルが早いファッションブランドを指します。
ファストファッションはその持ち前の機動力を生かし、大手ブランドが「(発表)→流通→販売」を行う間に「企画→製作→(発表)→流通→販売」の全てのフローを行えることが強みです。
これにより大手ブランドの次シーズンのデザインなどを模倣・参考にすることができ、企画に要する時間やコストを最小限に抑えることができるので、格好良いデザインの服を安く仕上げることが可能なのです。
いわば後出しじゃんけんと同じ。
相手がグーを出すと分かった後で、瞬時にパーを出せば勝てるという理論です。これは批判ではなくビジネスモデルの話です。一応。
コレクション日程の変更により発表→販売の期間が短くなると、ファストファッション得意の機動力も骨抜きにされてしまいます。
安いけど一昔前のデザインの服は見向きがされなくなります。
トレンドが分散化?
ファストファッションへの影響と連動して、トレンドが分散する可能性も考えられます。
ファッションのトレンドは自然発生的に見えても、やはり業界やブランドが牽引してトレンドを作り出している面があります。
これまでは販売の1年前にコレクションを発表することで、業界全体が向かうべき方角を前もって知ることができましたが、コレクション発表後に即販売開始となるとトレンドが業界に浸透し、それが消費者にまで落ちてくる時間が短くなります。
結果として大きなうねりとしてのムーブメントのようなものは発生しにくくなり、散発的なトレンドがいくつかに分散するようになるのではないかと思います。
セレクトショップの役割の変化?
セレクトショップもこの潮流では取り残されるプレイヤーかも。
理由は他と同様コレクション発表→販売までのタイムラグがなくなることで、バイイングする時間がなくなってしまうから。
さらに上述のようにブランドが自社でECサイトを立てると、流通の力は相対的に弱くなってしまいます。
そもそもセレクトショップはファッション界のキュレーターだと思っていて、自社製品を持たないからこそアパレルブランド以上に世界観が必要な気がしてるんですが、最近は売れる商品を仕入れてそれらを捌くだけっていうショップもスタッフの方も多く、それだとアパレルブランドと変わらないよなぁと思っていたら最近は利益率が高いオリジナル商品に力を入れていてセレクトエリアは店内の奥に数ラックひっそりたたずむだけという店舗も結構あり、もう全国展開のセレクトショップは本来的な意味でのセレクトショップじゃないなと思っている今日この頃です。
これはセレクトショップが悪いというよりも、時代が変わっていくのでショップやショップの価値も変わるべきかもしれないっていう話ですね。
メディアのWebシフトがさらに加速?
次々とファッション誌が廃刊しWeb媒体へシフトしていますが、その傾向がさらに加速するかもしれません。
紙メディアがWebメディアに劣る点は、やはり発行までに時間がかかってしまうこと。
印刷物は後から修正ができないぶん確認作業も多くなりますし、印刷・頒布・販売の時間もかかります。
コレクション発表→即販売開始というスピード感の場合、従来まで紙メディアのスケジュール感では紹介するころには既に商品が売れてしまっているという状況が起こりかねません。
さらにWeb媒体はオンラインショッピングとの相性も抜群。コレクションピースを紹介しつつ「すぐに買う」ボタンを設置すれば、強力な販促効果がありそう。
そう考えるとStyle.comが昨年メディアからコマース事業へと舵を切ったのも、あながち間違っていないかもと思えてきます。
もちろん紙媒体が消えるとは思ってなくて、今後紙メディアは着こなし特集やスナップなどストック型の読ませる企画記事が中心になっていくのかも。
若者のファッション離れ
最近は何でも「若者の○○離れ」といいますが、若者は常に変化の前線にいるもの。
業界と若者の距離が離れていくということは、若者に合わせて変化できていないことの表れでもあります。
古い伝統の良いところは守りつつも、業界全体が現代的にアップデートしてファッションがもっと盛り上がればよいなぁと服好きの一人としては思っています。
ともあれ、今回の動きは今後も注視していきたいです。