DRESS CODE.というブログの大きなテーマでもあるのが「こだわり」
『It’s My Sunday Best』は、ファッションにこだわりを持つ人の「とっておきの一品」を教えてもらう企画です。
ファッションは一番外側の中身と言われます。そんな人のもっとも外側にあるファッションを通じて、その人の内面に迫ろうというのが本企画。
“Sunday Best”とは[晴れ着、よそゆき]の意。なにげないように見えるアイテムに込められた、その人ならではの思い入れをインタビュー形式で聞かせてもらいます。
今回お話を伺った人
栗村さん
Web広告代理店でプロデューサーとして働く横浜出身の25歳。趣味は街を散歩したり絵を描くこと。@maccho_manというInstagramアカウントでゆるいイラストを不定期で更新。
Sunday Best Vol.15は都内の広告代理店で働く栗村さんをインタビュー。
栗村さんとは昨年の11月頃に仕事を通じて知り合いました。打ち合わせで同席した栗村さんはぼくとも年齢が近く、またその時の服装も素敵で一目見て気が合うなと感じました。
また、後になって知ったのですが栗村さんはイラストを描くのが好きだそう。Instagram(@maccho_man)で描いた絵をアップしているのですが、このイラストも優しい色合いとタッチでとても素敵。
独特な感性を持ち、常に穏やかな栗村さんとは仕事でやりとりをするうちに仲良くなり、この度Sunday Bestの取材をお願い。快く引き受けてくれました。
栗村さんのとっておき:山葡萄の籠バッグ
――今回とっておきの物として選んでいただいた籠バッグ、いつ頃買った物ですか?
去年の夏頃にインターネットの籠バッグ専門店で買いました。
――籠バッグを男性が持つのは珍しい気がします。買った理由や、どういった思い入れがあるのでしょう。
ぼくは昔から松浦弥太郎さんが好きで。そんな弥太郎さんがスーツに籠バッグを合わせているスタイルを見て、これは格好良いなと思ったのが興味を持ったきっかけですね。たしか20歳くらいの時です。
そこから色々と調べてみると、籠バッグは梅雨の時期しか取れない山葡萄(やまぶどう)の蔓を使って職人の方が1点1点作っているそうなんです。それを知って感動して一気に欲しくなってしまいました。
使うほどに味が出て、世代を超えて使えるかばんって良いなぁと。
20歳の頃から欲しいなと思い始めて、籠バッグを買うために少しずつ貯金も始めました。並行して3年くらい籠バッグがありそうなお店を見つけては探してみたりしたんですが、なかなか理想的なものに出会えず。
ついに昨年の夏に決心してインターネットで見つけた理想的な形のこのバッグを購入しました。
松浦弥太郎さんのエッセイの中に『フランス人が朝市にパジャマ姿で籠バッグだけ持ってやってくる』という話があるんですけど、その情景や世界観もなんだか素敵だなと。
20歳の頃に籠バッグをスーツで使っているスタイルに憧れを抱きました。まだスーツに合わせて使ったことはないんですが(笑)、早くこのバッグが似合う人になりたいなと思います。
生活や仕事をするための服が好き
――栗村さんのDRESS CODEはなんですか?
※DRESS CODE=ファッションにおいて大切にしていること
着ていて気分が良くなることですね。汎用性が高いとか、コーディネートに合わせやすいとかではなく、自分が好きだと思った服を着ることを大切にしたいと思っています。
見た目のデザインはもちろんですが、特にぼくはバックグラウンドがある服が好きです。今回の山葡萄の籠バッグのように、その服にまつわる成り立ちのストーリーや裏話を知ると途端に惹かれてしまうんです。
そんなこともあって買い物はお店に行って、店員さんの話を色々と聞かせてもらいながら買うことが多いです。
――具体的にはどんな服やファッションスタイルが好きですか?
ぼくは昔からワークスタイルやユニフォームみたいな、生活や仕事をするためにできた服が好きです。
世の中にはお洒落のために作られた服もたくさんあります。でもぼくは暮らしのために作られた服でお洒落をするのが楽しくて。
――そんな栗村さんが普段よく行くショップなどがあれば教えてください。
ここ1,2年は横浜にある「BLAUBERG an der KUSTE(ブラウベルグアンダーキュステ)」というお店によく行きます。
ヨーロッパを中心とした優しい雰囲気のワークスタイルを提案するお店で、古着からセレクトまで揃う良いお店です。スタッフさんも皆さん良い方ですよ。
Sunday Bestを取り入れたコーディネート
- Cover-all:DANTON
- Shirt:USED
- Pants:YAECA
- Shoes:SHOES LIKE POTTERY
- Bag:山葡萄の籠バッグ(My SundayBest!!)
- Watch:SMITHS
「『お洒落して来てください』と言われたのに、結局いつも通りの格好で来ちゃいました…笑」
そう言って笑うこの日のコーディネートは、栗村さんらしいアースカラーを中心にした柔らかいスタイル。好きだというワークスタイルに今っぽいアイテムをミックスさせ、ワーク特有の土臭さを上手く中和しています。
トップスはフランスのワークブランドDANTONの白いカバーオール。抜けるように爽やかなオフホワイトのカラーが春らしい1着です。
白いアウターはのっぺりと平面的な印象になってしまいがち。そこで首元からチラリとボルドーのストライプシャツをのぞかせてメリハリを付けています。
足元は福岡県久留米市にある話題のシューズメーカー・ムーンスターが手がけるSHOES LIKE POTTERYというブランド。
ヴァルカナイズド製法で作られた、ぽってりとしたフォルムが可愛いシューズです。
アンティーク感のある時計はSMITHSという1851年創業の英国ブランドのもの。すでに時計事業からは撤退しており、現在は航空機などの電子機器メーカーになっています。
そしてバッグはお気に入りの山葡萄の籠バッグ。使い込むほどに艶を増す山葡萄の蔓を使ったバッグは一見素朴なイメージですが、コーディネートに取り入れると強い存在感を発揮します。
ファッションは生活の中にあるもの
――栗村さんがファッションを好きな理由はなんでしょうか。
(考え込みながら)うーん、難しい質問ですね。。正直にいうと、ぼくは自分でファッション好きだという自信が持てないんです。
――えっ、そうなんですか?ぼくは一目見て「この人は絶対ファッション好きだ」と思いました。
もちろんファッションに興味がない訳ではないんですが、一般的に「ファッション好き」というともっと突き詰めてて、のめり込んでいる人が多い印象で。
ぼくはあまり深く考えずに自分なりに楽しんでいるだけなので、そうした人たちと話すと「自分なんかがファッション好きと言っていいのかな…」と感じることが多いんです。だから今回のインタビューもぼくなんかでいいのかと、迷いました。笑
ぼくにとってのファッションは暮らしの中にあるものの1要素。ファッションだけを取り出して話をしたり、人と比べたり評価したりするものとはちょっと違うかなぁと。
ファッションがのめり込むほど好きという人にはちょっと憧れがありつつも、それぞれが自分なりの形でファッションを楽しめればいいなと思いますね。
服はその人を表すと改めて実感
時にニコニコとした笑顔で、時には真剣に考え込んだ表情でインタビューに答えてくれる栗村さん。
そんな彼の柔和な雰囲気は服選びやファッションスタイルにもよく表れているなと取材を通じて感じました。
「ファッションは一番外側の中身。 服を選ぶ基準を知ることでその人の人となりが分かる」というのがSunday Best企画の根底にある考え。
素朴で優しい見た目、そしてこだわり抜いた作りの籠バッグは、そのまま栗村さんの性格や価値観をよく表しているなとお話を聞いていて思いました。
そして「ファッションは暮らしの中にあるもの」という彼の意見はぼくも同感。
誰もが毎日必ず身につけるものである以上、ファッションは一部の人の趣味ではなくもっとその人の生活に密接に結びついたものであるはず。
働く、食べる、寝るといった生活の基本的な営みと同じ象限に、装うという行為がもっと当たり前に存在してもよいのになと、栗村さんとのインタビューを振り返りながらそう思いました。
そんな栗村さんと最後に一緒に写真を撮ってインタビューは終了。栗村さん、ありがとうございました!またゆっくりお話しましょう。